MACDは「トレンドの呼吸」を感じ取るツール

トレンドの転換点を掴みたい――。
そんなとき、多くの人が使う定番の テクニカル指標 が「 MACD (マックディー)」です。
ただし、“ゴールデンクロスで買い・デッドクロスで売り”だけに頼っていると、ダマシが多くなり「結局どっち?」と悩むことも多いでしょう。
MACD
の本質は「トレンドの勢い(モメンタム)」を捉えること。
どの方向に、どれくらいの力で相場が動いているかを教えてくれる指標です。
RSI やストキャスティクスが“行き過ぎ”を見るのに対し、 MACD は“トレンドの継続性”を読み取るのが得意です。
💡筆者メモ: MACD は「トレンドの呼吸」を感じ取るツール。
一見シンプルでも、使いこなせばトレードの精度が一段上がります。
👥 この記事は誰向け?
- MACDの基本は知っているが、クロスだけで判断してしまいダマシに悩んでいる人
- トレンドの方向性と勢いをより正確に捉えたいスイング〜デイトレーダー
- TradingViewで実際にMACDを使ったエントリーのタイミングを見極めたい人
- RSIとの組み合わせで、過熱感や反転ポイントも同時にチェックしたい人
📖 この記事でわかること
- MACDの基本構造と見方のポイント
- トレンドの強弱や方向性を正確に捉えるためのMACD設定例
- RSIとの組み合わせで「勢い+過熱感」を確認する方法
- TradingViewで実践できる、すぐ使えるMACD+RSIの設定例
- ダマシを減らしてトレード精度を上げるための実践的なコツ
MACDの基本構造と意味を整理しよう

MACD は「 移動平均線 の差」を使った指標で、構造を理解すると一気に見方が変わります。
項目 | 内容 |
|---|---|
MACD ライン | 短期EMA − 長期EMA(=トレンドの勢い) |
シグナルライン | MACD ラインのEMA(=勢いの平均化) |
ヒストグラム | MACD とシグナルの差(=勢いの強弱) |
TradingView の インジケーター 欄で「 MACD 」を追加すると、これら3要素が自動的に表示されます。
EMAとSMAの違い(補足)
MACD は短期EMA − 長期EMAで計算されますが、ここで使われる EMA(指数移動平均) と、よく聞く SMA(単純移動平均) には違いがあります。
指標 | 計算方法 | 特徴 |
|---|---|---|
SMA(単純移動平均) | 過去N期間の終値の平均 | 過去の値を均等に扱う。反応がやや遅い |
EMA(指数移動平均) | 最新の値にウェイトを置き、直近ほど重みが大きい | 価格変化に素早く反応するためトレンドの勢いを掴みやすい |
💡MACDでEMAを使う理由
- EMAは直近の価格変動に敏感なので、トレンドの初動や勢いを早く捉えられる
- SMAよりもダマシシグナルが減り、MACDの本来の目的(モメンタム確認)に適している
トレンドを確実に捉えるおすすめ設定(フィボナッチベース)

MACD の設定値は短期EMAと長期EMAの差分が重要ですが、単に経験則で決めるよりも、 フィボナッチ比率 を参考にすると自然な調整が可能です。
用途 | 短期EMA | 長期EMA | シグナル | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
標準(一般) | 12 | 26 | 9 | フィボナッチ比率 1:2を参考にしたバランス型。日足向け |
スイング 向け | 8 | 34 | 5 | 短期に少し鋭敏、 フィボナッチ比率 1:4でトレンド重視 |
デイトレ 向け | 5 | 20 | 4 | より短期の反応重視。比率1:4で短期波を捉えやすい |
長期投資向け | 20 | 50 | 10 | 騙しが少なく明確なトレンド確認に最適。比率1:2.5前後 |
💡ポイント:短期EMAと長期EMAを フィボナッチ比率 に沿って設定することで、自然なトレンド追従性が得られます。
設定を変えるとどうなる?
- 短期EMAを小さく → 反応が早くなるが、ダマシが増える
- 長期EMAを大きく → 精度が上がるが、シグナルが遅れる
つまり、「早さ」と「信頼性」はトレードオフ。自分のスタイルに合わせて調整するのがポイントです。
✅️この表に示した設定値はあくまで一般的な目安であり、実際には自分のトレードスタイルや時間軸に合わせて、 バックテスト を行い最適な値を見つけるのが現実的です。
バックテスト についてはこちらで詳しく紹介しています。
実践的な見方:クロスだけで判断しない

MACD
はクロスシグナルが有名ですが、それだけでは不十分です。
重要なのは「ゼロラインとの位置関係」と「ヒストグラムの勢い」です。
状況 | 意味 |
|---|---|
MACD がシグナルを上抜け+ヒストグラム拡大 | 強い上昇トレンド発生 |
MACD がシグナルを下抜け+ヒストグラム縮小 | 下降への転換サイン |
ゼロライン上でのゴールデンクロス | 上昇トレンド内の押し目 |
ゼロライン下でのデッドクロス | 下降トレンド内の戻り売り |
特に「ゼロラインとの位置関係」は非常に重要です。
たとえクロスが発生しても、ゼロライン下なら“戻り売りの可能性”が高く、むやみに買いに入るのは危険です。
✅コツ:クロス → ヒストグラムの向き → ゼロラインの位置
この3点を見ると、トレンドの“呼吸リズム”が見えてきます。
MACDの精度を高める組み合わせ方:RSI編

MACD 単体でもトレンドの勢いは分かりますが、過熱感や転換のタイミングを見極めるには RSI との組み合わせが効果的です。
なぜRSIと組み合わせるのか?
- MACD:トレンドの強弱(勢い)を把握
- RSI:買われすぎ・売られすぎ(過熱感)を把握
- 両方を組み合わせると、トレンドの方向性+反転の可能性を同時に確認できる
見方の例
状況 | 解釈 |
|---|---|
MACD 上昇中 + RSI が50〜70 | 上昇トレンド継続中、押し目買い狙いが有効 |
MACD 上昇中 + RSI が70超 | 上昇トレンドだが過熱状態、天井警戒シグナル |
MACD 下降中 + RSI が30〜50 | 下降トレンド継続中、戻り売り狙いが有効 |
MACD 下降中 + RSI が30未満 | 過熱売り状態、底値警戒シグナル |
実践ポイント
- MACDでトレンドの方向と勢いを確認
- RSIで過熱感を判断し、エントリー・利確タイミングを調整
- RSIの設定はデフォルト14でもOKだが、短期トレードなら7〜9にして反応を早めるのもアリ
💡コツ: MACD で勢いを捉えつつ、 RSI で“行き過ぎ”を確認する
この組み合わせだけで、ダマシシグナルを大幅に減らせます。
📊 MACDダイバージェンスでトレンドの“限界”を察知する

トレンドが続くと見せかけて、実は勢いが失われている――
そんな“違和感”を数値で捉えられるのが
MACD
ダイバージェンス です。
MACDダイバージェンスとは?
価格と
MACD
(またはヒストグラム)の動きが逆行する現象のこと。
「価格は高値更新しているのに、
MACD
が下がっている」 状況では、
上昇トレンドの勢いが弱まり、反転リスクが高まっていることを意味します。
種類 | 条件 | 意味 |
|---|---|---|
ベアリッシュ(弱気) | 価格が高値更新、 MACD が低下 | 上昇の勢いが鈍化、反転警戒 |
ブリッシュ(強気) | 価格が安値更新、 MACD が上昇 | 下落の勢いが弱まり、反発の可能性 |
💡ポイント:
MACD の“傾き”はモメンタム(勢い)を示すため、
価格よりも早くトレンド変化を示唆することが多いです。
実践編:Pine ScriptでMACD+ダイバージェンスを作ろう
プリセットの インジケーター にも MACD はありますが、カスタムストラテジーとして自作すると、より実践的な戦略設計が可能です。
TradingViewでの簡易検出コード例
//@version=6
strategy("MACD Divergence", overlay=true, max_labels_count=500)
// === パラメータ ===
fastLength = input.int(8, "短期EMA", minval=1)
slowLength = input.int(34, "長期EMA", minval=1)
signalLength = input.int(5, "シグナル", minval=1)
lookback = input.int(5, "比較バー数", minval=1)
// === MACD計算 ===
fastEMA = ta.ema(close, fastLength)
slowEMA = ta.ema(close, slowLength)
macd = fastEMA - slowEMA
signal = ta.ema(macd, signalLength)
// === ピボット検出 ===
bearPivot = ta.pivothigh(high, lookback, lookback)
bullPivot = ta.pivotlow(low, lookback, lookback)
// === 前回MACDと比較 ===
var float prevBearMacd = na
var float prevBullMacd = na
var float prevBearPrice = na
var float prevBullPrice = na
bearDiv = false
bullDiv = false
if not na(bearPivot)
if not na(prevBearMacd)
bearDiv := high[lookback] > prevBearPrice and macd[lookback] < prevBearMacd
prevBearMacd := macd[lookback]
prevBearPrice := high[lookback]
if not na(bullPivot)
if not na(prevBullMacd)
bullDiv := low[lookback] < prevBullPrice and macd[lookback] > prevBullMacd
prevBullMacd := macd[lookback]
prevBullPrice := low[lookback]
// === シグナル描画 ===
plotshape(bearDiv, title="Bear Div", style=shape.triangledown, location=location.abovebar, color=color.red, size=size.small, text="MACD↓")
plotshape(bullDiv, title="Bull Div", style=shape.triangleup, location=location.belowbar, color=color.lime, size=size.small, text="MACD↑")
// === アラート条件 ===
alertcondition(bearDiv, "Bearish MACD Divergence", "売りサイン:MACDダイバージェンス検出")
alertcondition(bullDiv, "Bullish MACD Divergence", "買いサイン:MACDダイバージェンス検出")- 他の指標と組み合わせて実装 → ダマシの少ないエントリーや利確のタイミングを自由に調整
- 詳しくはこちら
- バックテストで戦略評価 → 過去相場で精度や損益を検証
- 詳しくはこちら
- 通知機能を組み合わせる → 自動でアラート・発注まで可能
- 詳しくはこちら
まとめ:MACDは“トレンドの呼吸”を読むための相棒

- クロスだけでなく、勢いと位置関係を意識する
- 設定値は自分の時間軸に合わせて調整する
- RSIと組み合わせると「過熱+勢い低下」の両面で確認でき、信頼度が上がる
- RSIと違い、MACDのダイバージェンスは**トレンドの「終わり際」**を早めに察知できる
- 強いトレンド中の一時的な乖離は“休憩”の場合もあるため、ゼロラインの位置関係と併せて判断が重要
MACD
は、ただのシグナルではなくトレンドの強弱を見抜く“感覚系指標”です。
慣れてくると、ヒストグラムの伸び縮みだけで相場のリズムがわかるようになります。